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雑草と呼ばれた花の名前を、ひとつずつ覚えていく。
2026.05.026 分で読めるby 晩婚夫婦

子どもが「これ、なんて名前?」と聞いてくる。
道端にひっそり咲いているピンクの小さな花。私は「雑草だよ」と言いかけて、止まった。名前を知らないまま「雑草」と呼ぶのは、少し失礼な気がしたから。
スマートフォンで調べると、ハルジオンだとわかった。春紫苑。春に咲く紫苑、という意味らしい。
それからは散歩のたびに調べるようになった。カラスノエンドウ、ホトケノザ、ナズナ、ヒメオドリコソウ——。名前を知ると、急に「見える」ようになる。今まで通り過ぎていた場所が、小さな花でいっぱいだったと気づく。
名前を知ることで、世界の解像度が上がる。語学学習も、きっと同じことだ。
この春から、英語の勉強を本格的に再開した。単語を覚えるたびに、知っている世界が少しずつ広がる感覚がある。ハルジオンの名前を覚えたときと、同じ感覚だ。
知らない街に行っても、言葉を覚えるほどに、その場所が見えてくる。雑草だらけに見えた道が、花の名前を知ったあとで豊かに見えたように。
子どもにもいつか、行く先の街の草花の名前を教えてあげたい。
アスファルトの割れ目にも、塀の根元にも、どこにでも春が来ている。近所の公園の端っこ、誰も気にしていないような場所に、今日もハルジオンが咲いていた。