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5歳の「なんで?」に答えられない夜の話。
2026.04.224 分で読めるby 晩婚夫婦

お風呂上がり、パジャマ姿で絵本を読んでいた娘が、ふいに聞いてきた。
「ねえ、どうしてうちは引っ越すの?」
私たちは、しばらく黙ってしまった。
「新しい場所でいろんなことを経験したいから」とか「世界を見てみたいから」とか、いくつか答えを頭の中で並べてみた。でも、どれもどこか嘘くさい気がして、言葉が出てこなかった。
本当のことを言えば——怖いからだ、とも言える。このまま同じ場所で、同じように歳をとっていくことへの、漠然とした怖さ。それを子どもに説明できるほど、私たちはまだ整理できていない。
子どもの「なんで?」は、大人が目を背けていた問いを、まっすぐに照らし出す。
「お友達と離れるの、やだ」と言った。それはそうだ、と思った。
「新しいお友達もできるよ」と言ったら、「今のお友達がいい」と言った。これも正しい。
しばらく沈黙が続いて、「でも、新しいごはんは食べてみたい」と言った。娘らしい着地点だと思って、少し笑った。
あの夜の問いに、完全な答えはまだ出せていない。でも、娘が「やだ」と言えたこと、「でも」と続けられたことは、良かったと思っている。
私たちも、そうやって「やだ」と「でも」を繰り返しながら、ここまで来た。