小さな気付き、習慣の手直し、ベランダの植物のこと。海外移住の準備をしながら綴る、いまの暮らしの断片です。
ベランダに立って、湯気が上がるのを見つめる五分間。それだけで、その日の私たちはずいぶん優しくなれる気がする。
ハルジオン、カラスノエンドウ、ホトケノザ。アスファルトの隙間にも、ちゃんと春が来ている。
冷蔵庫の前で立ちすくむ夕方を、もう繰り返したくなくて。シンプルな七日間の記録。
「ねえ、どうしてうちは引っ越すの?」その質問の前で、私たちは、しばらく黙ってしまった。
間違えて笑われて、もう一度言い直す。それだけで、世界が少しだけ広がっていく感覚がある。
クライアントへのお知らせ、時差、ビザ、口座、健康保険——。整理してみたら、思ったより道筋は見えてきた。
バジルの双葉が出てきた。引っ越したら、この鉢たちはどうしようか。
近所の公園に、おにぎりと水筒を持って。たった三十分でも、ちゃんと旅をした気分になる。
段ボール箱の前で、私たちは何度も立ち止まる。手放すこと、残すこと、その線引きの話。